四代豊助作 木具写盃台
盃台ってナニ?
盃台とは、写真のように朱塗の盃をのせて運ぶための台のこと。現代の日常生活の中では、あまり見かけない道具。懐石をご存知の方なら知っているかもしれませんが、盃洗同様、最近は忘れ去れつつある道具なのかもしれません。
基本、のせられる引盃と同様、盃台は木地に漆が塗られたものなのですが、後の時代になると(木具写とは別に)陶器として製作されたものも登場します。
こうして乗せられた状態だと、溜塗の漆器に金泥で松葉の絵が描かれた盃台に見えますよね?
特別な一献
知らない人向けに簡単な説明。
省略なしの本来の「茶事」では、お茶を頂く前に料理(懐石)をいただきます。その中で「お酒」も飲むのですが、盃台はこの際に使われます。
お茶を頂く前に酒を飲む行為の目的は、何も「酔っ払って騒ぐため」ではなく、「血縁のない人間同士の絆を深める」という意味があるのです。
そこで盃台を使う理由…それは盃、及びそこに注がれるお酒が「特別である」ことに他ならず、これは一種の儀式なんですね。
神前の結婚式で行う「三々九度」(これまた最近は教会式・人前式が多数になって馴染みがなくなりつつありますが…)、「義兄弟の盃」(ヤクザの話だけじゃなく)など、どちらも意味合いとしては「絆を確かめる・関係をより深いものにする」というものです。ちょっとイメージしやすくなりましたかね?
これを使っていただくお酒とは、普段から楽しんで飲むお酒と、少し意味合いが違う。それを端的に示すアイテムとしての盃台なのです。
でもまぁ、そこまで深く考えなくても「酒を飲んで仲を深める」というのは、まだまだ馴染みがありますかね?
覗いてビックリ、陶器でした
のせられた人数分の盃がそれぞれ行き渡ると、この盃台の内部が見えます。
おや…漆器らしからぬ景色が…。緑釉の掛け流し?なるほど、これが木具写。という、趣向なのですね~。
余談ですが、こうして単体で見るとなんだか灰皿っぽく見えてしまうので、誤解を避けるため、あえて先に引盃をのせた状態の写真を見てもらいました。(笑)
本来の使われている姿は、こんな感じ、ということで撮影用に引盃を別に用意しました。(朱の引盃は商品には含まれません)
底部には「豊助」の小判印。さらに四代豊助の共箱も添っております。
四代・豊助については、ブログ・勉強部屋「郷土の焼き物-豊楽焼」でご紹介しています。
木具写はこのような盃台以外にも、茶器(棗)・蓋付碗・菓子器(食籠)など、もともと「木」を使って作られた器を模して作ったものがあります。
「ありきたりな道具でやる茶事にも飽きたし、ちょっとしたサプライズ演出で茶席の場を楽しくしたい」
そんな需要にビタッとハマって一躍ヒットしたんでしょうかね。どの器も茶事で「本日の主役」とまではいかないものの、名脇役として、人々を楽しませてきたんじゃないか、そんな風に思います。