御深井焼01-オフケヤキって何だ?
店舗移転、サイトリニューアルで頓挫していた勉強部屋「御深井焼」シリーズを再開するにあたって、過去の記事を加筆修正しております。
編集履歴
- 2018/3/16日 掲載
- 2018/10/13 修正
- 2021/2/3 レイアウト変更に伴う一部修正
御深井焼ってナニ?
御深井焼(おふけやき)って、どういう焼き物なの?
気軽に、ふと、何気なく、ボンヤリと、お客様から聞かれるこの質問。
実はいろいろ深くて難しい質問なのです。
過去の勉強部屋や商品紹介ページでは、ちょこっと、かる~く触れてはいるものの、つっこんだお話をやや避けてきた僕なのですが・・・やはり「尾張の郷土美術」の店を掲げる以上、避けては通れない道なのであります。(- -;)
意を決して、この世界に深く足を踏み入れてみようと思います。深みにはまって溺れない様、慎重に。
ゆっくりじっくり、絡まった頭の中を整理整頓してみます。
そもそも「○○焼」というコトバが厄介だ!
御深井焼について勉強しているうちに、一つ気付いた問題点の一つ。
「○○焼」という、焼き物の種類を表す名称ですが、これが問題をややこしくしている要因ではないか?と、思うのです。
まずここから解きほぐしてみましょう。
焼き物といっても、いろんなバリエーションがありまして、これをざっくり、大雑把に分類すると・・・
- 陶器or磁器
- 色(釉薬)
- 産地(土や窯の場所)
などによる分類がされます。
これらの要素をわかりやすく、一言で表現する方法が「○○焼」というわけです。
産地の名前を冠した○○焼
たとえば「萩焼」は「山口県の萩市一帯で焼かれる陶器の総称」。わかりやすいですよね。文字通り「萩市で焼かれた器」は、萩焼といっていいでしょう。
では御深井焼は?
名古屋城の北側・下御深井御庭にて焼かれた焼き物。
これが模範解答。でも…それだけじゃない。
「こうです!」と、言い切れない。んー、厄介です。
「萩焼」のように、産地の名前が冠された焼き物の名称であれば、非常にシンプルな話なのですが、御深井焼に関しては、それだけじゃないのです。
釉薬の特色を指して呼ぶ○○焼
何も「○○焼」という呼び方は、産地の名前を冠するだけではない・・・。
酸化銅を呈色材(釉薬)として混ぜて焼いた、あの緑色の焼き物。
単に「織部」と呼ばれることも有りますが、この手の焼き物を指して「織部焼」と呼びますよね。これは産地の名前を冠した名称ではないです。
同じように、鉄分を含んだ灰釉ベースの釉薬、これを「御深井釉」と呼び、この釉薬が掛けられた焼き物も総じて「オフケヤキ」と呼ぶのです。
ただし、この焼き物は名古屋城の御庭で焼かれただけでなく、「美濃で焼かれた御深井釉の焼き物」も存在するのです。
でも特にこれらを分け隔てず、ひっくるめて御深井焼と呼んでしまっています。
名古屋城の下御深井御庭で焼かれていない…でも「御深井焼」なの?
もうこの時点で混乱しますよねぇ…。
さらに「深井製」という印のある作品もあります。
この印がある焼き物は釉薬が御深井釉ではない。
土もちょっと違う土ですから、焼成地も美濃ではなさそう。
しかも名古屋城・下御深井で焼成されたとも限らない。
でも、これも御深井焼と呼ばれています。
えー?って話ですよねぇ・・・。
何でこんなにややこしいのか?
さて、「いろいろ深くて難しい質問である」ということがお分かりいただけたかと思います。
「御深井焼」と呼ばれる焼き物
- 名古屋城の下御深井御庭で焼かれた焼き物。
- 御深井釉をかけられた焼き物。
- 「深井製」の印のある焼き物。
どれも、現在では「御深井焼」と呼ばれているものです。
「御深井焼ってナニ?」に答えようとすると、困ってしまうのはこういう事情があるわけです。
それぞれに別々の名前・呼称があればこんなややこしいことにはなってないのにねぇ…。
「尾張藩の(関わっている)焼き物」という大きな枠でくくってしまうと、御深井焼以外の焼き物(萩山焼、東山焼、楽二園焼、戸山焼)もひっくるめた言い方になるので、これはこれで、具合が悪い。
尾張藩は江戸幕府が成立した17世紀~明治維新で大政奉還が行われた19世紀までの、実に200年以上の歴史があり、その長い歴史の中でもかなり早い時期から焼き物を製造していました。
ただし2世紀もの長い期間、同じところで、同じ焼き物を、延々と生産し続けていたわけではないでしょう。その時々の変遷があり、また事情や目的も違っていたり、中断していた時期も当然あったはずです。
にもかかわらず、御深井焼は「尾張藩の始まりから最後まで」の期間にわたって、ザックリと大まかに指し示される尾張の焼き物の総称として使われている節があるのです。
これは厄介だ…
どう厄介なのかというと…
「名古屋城・下御深井御庭で焼かれた焼き物」という説明だけでは、当てはめられない御深井焼が出てきますし、
「御深井釉」ではない御深井焼も存在し、
「深井製」の印がない御深井焼もある…
なので、「御深井焼」というものを説明しようとすると、困ったことになるのです。
やはり「御深井焼の一連の流れ」を理解する必要がありそうです。
次回からより細かく、御深井焼のルーツを勉強していきます。
初めまして。
勉強したいことが多々あります。
御深井焼と思われる 江戸期の上手の茶碗を持っています。
その茶碗には銘の代わりに大きい目の松葉のマークが署名されています。
有名な方の品と思われますが、思い当たるような方がいらっしゃるでしょうか?
写真を送ることができるならば、送信し見ていただきたいと思います。
お手数をおかけいたします。返信お待ちいたします。
はじめまして。
メールアドレスの方にお返事させていただきました。
よろしくお願いいたします。