笹島焼 青絵蓮華形鉢
笹島焼
青絵蓮華形鉢
日本の方なら、ラーメンやチャーハン、麻婆豆腐といった中華料理を食べるときに使う「レンゲ」で馴染みのある形ですが…。
こちらは大きさは22㎝×13㎝。
とても片手で扱える大きさではありません。こちらは「鉢・皿」といった用途の器でございます。
かつて絵付けなどがないシンプルな「笹島焼 白楽茶碗」をご紹介しましたが…笹島焼といえば、こちらのような絵付けのあるタイプが実は本領。むしろ以前ご紹介したような絵のない笹島焼はかえって珍しいタイプになります。
不思議な絵
さて、なんでしょう……緑色の亀?赤い旗??
古美術の世界には、往々にして「オリジナルを知らない人には全く訳がわからないもの」というものがあります。この器もベースとなった作品があり、そのうえでデザインにアレンジを加えているため、オリジナルを知っていないと「ナニ?コレ?」となってしまうのです…。
この作品は中国・漳州窯で作られた、呉須青絵仙境図大皿が意匠のベースとなっています。
参考の写真を載せられればいいのですが…あいにく手元になく…そんな時は…グーグル先生!お願いします!
便利な時代ですねぇ…。
本歌(オリジナル)は明代末期の中国で作られた磁器で、桃山時代から江戸初期にかけて日本に輸入され、各藩の大名や上流階級の間でもてはやされ、いわゆる威信財としてその地位を確立していたものです。のちに肥前の吉田窯や尾張の犬山焼、さらには笹島焼でもこの大皿の写しが作られています。
簡単にこの本歌となっている大皿の図柄の説明をしますと…
見込はに黒色の輪郭線の上から緑の釉薬で彩色をしてある絵は、「仙境」とよばれる仙人、神様が住まう理想郷(三重の楼閣や切立つ山々)が「仰角」の視点で描かれている。
見込を回る体部内側は4分割され、花や葉の窓枠の中に、様々な仙境の場面を連想させる絵が描かれており、その間には赤絵で角印が描かれている。
ではもう一度、笹島焼の蓮華鉢を見てみましょうか。
緑の亀かと思われたのは、実は4分割された窓絵のうちの一つで、赤の旗と思われたのは、角印のデザインだったのです。
大皿サイズをちっちゃくまとめ、要点だけをピンポイントで掬い取った、まさに「蓮華鉢」。
(…ホントにそういう洒落で作ったのかな?)
蓮の花弁を模ったボディは手捏ねで作られており、ボコボコした素朴な手仕事感は笹島焼ならではの味があります。本歌の大皿は磁器ですが、こちらは低火度焼成で楽焼に近いもの。器の成形にある程度の自由度がある分、こうした蓮華の形にアレンジしたのでしょうか。
高台はなく、底面を彫り込んで碁笥底となっており、その中央部に「笹嶋」の瓢形印が捺されています。
料理を盛る器として作られたものでしょうが、菓子器としてもよいでしょう。