香西文京作 瀬戸手付水指

瀬戸手付水指

香西文京 作

文京の好み

香西文京は江戸中期~後期の茶人です。

名古屋城下町(宮町)に住み、医師を生業とした人でした。

生没年など詳しい来歴こそ分かっていませんが、茶の湯は千家流を学び、また陶器を好んで制作していたことが知られています。

こちらの水指は「瀬戸釉(鉄釉)」の水指ですが、このほかにも文京は志野、黄瀬戸、織部などの様々な釉薬を用いた焼き物を作っており、陶芸はアマチュアながらも相当な数の作品を残しています。

水指本体は轆轤成形によって、底部から上部に向かって徐々に窄まった形を取り、緩やかな轆轤目を残すことで、この凹凸が器肌に柔らかな風情を与えています。そして水指の蓋を受けるため、口を上部に向かって開いている形状になっています。「袋形」とか「砂金袋」などと呼ばれる形状と同様の形状ですが、この水指には特徴的な「手」がついています。

これがこの水指の一番の特徴であり、香西文京が「好んだ形」だと思われます。

装飾としての「持ち手」・実用的な「摘み」

持ち手がついていて、共蓋もあると…なんだか「火消壺」のようでもあり…他にない独特な存在感のある水指ですね。

別途、成形して水指の上部に接合した「手」は、轆轤目の残る本体とは違って、多少ごつごつした手捏ねの雰囲気を持っています。

桃山期に作られた織部手鉢と同様に、この「持ち手」はあくまで「器の装飾」であり、実際にこの手の部分をもって持ち運ぶことはしません(中に水を入れて持ち運べそうなぐらい、頑丈な造りではあるのですが…)。

この水指には「共蓋」が付いており、この手の部分があることで「扱いにくそうだな」という印象を抱くかもしれませんが…実際はそうでもありません。むしろ点前の際に「ある程度の緊張感を持つこと」は結構大切であり、「緊張感がちょうどいい塩梅」になるアーチの構造をしております。

また、この「共蓋」が実に指かかりの良い摘みの形をしており、”とっても”持ちやすいのです(個人差はあります)。水指本体に「受け(蓋を支える突起部分)」は無いですが、しっかり蓋は乗ります。とはいえ、適当に、雑に扱うと蓋が中に落ちるので、「蓋を慎重に扱う」という意味でも、この持ち手部分は装飾以外にも用を成しているといえます。

置き合わせてみると、これが意外にも浮いた感じもせず、ベーシックな赤褐色の「瀬戸釉(鉄薬)」のおかげで、他の道具とも好相性だと思います。

「貫龍」印

水指の底部、および共蓋の裏側に宝珠形の「貫龍」印があり、こちらが香西文京の印になります。

共箱には「風禅造」の署名と宝珠形の「貫龍」の印があります。

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