川名焼 銅板染付捻子文火入

川名焼

銅板染付捻子文火入

独特の技法を用いて作られた、染付の火入。

作られたのは幕末~明治の時代です。

焼成地の「川名山(現在の名古屋市昭和区川名山町)」を取って、川名焼と呼ばれる焼き物です。

※写真の補正がうまく効かず、実際よりも青の発色がかなり鮮やかになっています…ご注意ください。

銅板染付

「染付」とは、白地の土から成形した器の上に、酸化コバルトを主とした絵具(呉須)で文様を施し、その上から透明釉をかけて高温焼成した磁器ことです。中国で始まったこの焼き物(大陸では「青花」と呼ばれています)は日本にもその製法が伝わり、17世紀から国内(伊万里・有田、その他の地域)でも作られるようになりました。

それまでの伝統的な陶器と違い、硬くて頑丈で美しい磁器は大変に人気があり、江戸時代に日本国内での生産が始まると、庶民の生活が豊かになるにつれ、爆発的に流通するようになりました。

しかし、この呉須による絵付けには人の手間がかかります。世の中に欲しがってる人はたくさんいるけれど、人手と時間が足りない。

これを何とかして、量産化ができるように考案されたのが、転写という技法です。

「印判手」「プリントウェア」など、呼称は様々あります。要するに人の手書きによる絵付けから、形板を使って同じ模様をいくつもスタンプのように量産できるようにしたのですね。

同じ模様

銅板転写を用いれば、同じ形板から何回も同じ図柄を転写することができます。

この火入も胴部の柄で全く同一の部分があります。

ここと

ここ

花弁や葉っぱの形から恐らくこれは菊の模様ですが…ほぼ一緒です。

方や、この部分は違う形板が使われています。

継ぎ目

人の手で一つ一つの絵付けを施すのにくらべ、かなり緻密な模様を出すことが可能です。

しかし難点もあり、曲面にプリントを施すため、どうしても継ぎ目ができてしまうことがあります。

この写真の中に、継ぎ目があります。さてどこでしょう?

川名山製

明治期以降、このプリント技法で作られた染付磁器は各地の窯業地でも生産されています。

ですので、「印判手染付」=「川名焼」ではありません。

この火入は高台内に「川名山製」の染付銘が入っているので、川名焼と分かります。

中には灰を入れて使うため、見込部分は土が見えています。ですので、茶碗や湯呑には使えませんね。

大きさは直径11㎝、高さ9.5㎝。

最近は肩身の狭い喫煙者の風潮を反映してなのか、小ぶりな莨盆・小ぶりな火入が好まれがちですが…こちらはたっぷり目の大きい火入ですね。

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