名美アートフェア2023【ブース詳細】

名美アートフェア2023、前田壽仙堂ブースの詳細です。

当店では毎年、郷土美術を広く皆様に親しんでいただけるよう、様々な趣向と切り口で、テーマ展示を行っております。

2023年は、尾張の郷土美術を顕彰・啓蒙していた地元コレクターたちによる美術展観である「第1回 一樂會」が行われてからちょうど100周年の節目の年に当たります。それを記念し、この一楽會についての特集展示を行います。

啓蒙活動の指標

かつて勉強部屋でも、度々取り上げている「一樂會」。

僕自身が尾張の古陶磁について勉強する際のとっかかりとして、非常に有意義な「勉強の指針」であるとともに、この組織自体が「啓蒙の指標」となる存在です。

100周年の節目に、ぜひ地元の美術愛好家の方たちにこの存在を知っていただきたい。

という思いで、今回はこの「一樂會」を紹介するとともに、それに関する品物を合わせて展示する企画です。

改めて、「一樂會」とは…?

大正12年から15年にかけて、愛知県商品陳列館・龍影閣で行われた、郷土美術の陳列会です。

この陳列会が行われるようになったのには、ある経緯があります。(一部、確証はありませんが)

まず明治から大正へ元号が変わるころ、地元に関する古物・骨董への興味関心が惹起される、ある出来事がありました。

それが大正4年、御大礼(大正天皇の即位)に際して、名古屋教育会が南久屋小学校において行った、尾張先人の遺墨遺品を集めた陳列展観です。これを開催するに際して…「ワシもこんなの持ってるぞ?」「ウチにもこんなのがあったよ!」といった調子で、方々から非常に出品が多く集まり…会期1か月の間になんと5回も展示替えを行い、連日盛況を極めました。

これを契機として、「地元の先哲偉人の顕彰」を目的とした陳列を春秋の年2回に分けて行おうという機運が高まり、「汲古会」という組織が発足しました。

この汲古会は郷土史研究をする団体として、古くは「源頼朝」から始まる、地元に関する先哲偉人を調べ、顕彰していくことになるのですが…。この「先哲偉人」に類される幅は非常に多岐にわたり、武士(殿様・重臣)・儒者・医者・芸術家(書家・茶人・音楽奏者)・僧侶・歌人・俳人などなど、本当に「ありとあらゆる分野の先人」を網羅しておりました。

汲古会では「偉人の忌辰録(亡くなった月ごとに分類した一覧)」を基に、毎月の命日にあたる先人に関する品を広く集め、月ごとに紹介していくようになります。

この汲古会の活動は、後の「名古屋市史・人物編」の編纂の基礎となるほど、非常に重要な活動なのですが…。

コレクター

「ワシ、その分野はコレクションしてないし、あんまり興味ないんだよなあ…」

古美術愛好家

「月ごとじゃなくてよー、もうちょっとお茶のあるジャンルだけで集めてやろまい」

なーんて、言ったかどうかは…定かではありませんよ?(笑)

要するに…「源頼朝から始めてたら、いつまでたっても自分の持ってる面白いコレクションについて話し合う機会が回ってこんガヤ…」というような…想像です。汲古会の活動を調べてみると、極めてアカデミックで、網羅する分野があまりに多岐にわたる為、「文句言う蒐集家はいただろうなぁ…」と、思えるのです。(ウチの親父とかすげぇ言いそうだし)

そんな蒐集家たちが、自らの楽しみのために、自分たちで始めちゃった「オレたちの陳列会」が、この一楽會である…

と、僕は想像しております。(本当は違うかもしれないけど)

でも「汲古会」と「一樂會」に、共通して参画していたコレクターがいたのは確実です。

まさに「部(いちぶ)の蒐集家たちが、しむための」という訳です。こんな洒落で着けたかどうかは…定かではありませんよ!?

汲古会の活動が「大正7年7月」からのに対し、第一回の一樂會が開催されたのが「大正12年6月」でしたので、このタイムラグも恐らくそういうことだろう、と想像する要素の一つです。

第一回「一樂會」の内容とは…?

我が尾張の地は古来製陶を以て名あり 瀬戸に名工を出せるは原より然るべき所なれども 茶人雅客にして製作を試み 其の陶器の世に珍重せらるるもの少からず 中には其技妙域に達し 専門の工人をして後に瞠着たらしむるもの往々にしてこれあり 余等此種の陶器を蒐集し時々陳列会を開きて同志相共に鑑賞し 以て研究に資せんとせる(後略)

「一樂會誌」の緒言の引用です。

これが一樂會の開催意義といいますか…方針発表のようなものですかね。ようするに「地元の古陶磁」をメインに集めて、それらに関係するものも「研究しに資するため、展示しよう」ということです。

身も蓋も無いですが、要するに…「見せ合いっこしようぜ!」という、コレクターたちの楽しみですよね。様々な品物を一堂に集め、いろいろ見比べることで分かること・見えてくるものがあるし、何よりそれが「楽しい」のは間違いないでしょう。

そしてその第一回は…

先ず 山本自敬軒 千村伯就 正木文京 井出退歩 杉山見心 五家の作品陳列会を開催せり 其五家を取れるは 年代稍々(少々)古く 作品比較的多からざるに依りてなり

とりあえず、数の少ないこの5人をフューチャーするぜ!ってことです。

実はまだウチの勉強部屋で取り上げてない人物が数人います…。

やらなきゃなー、やらないかんなー、と思いながら…前日になってしまったので、Webで紹介するのは、もうあきらめます。後日、やります。(いつになるやら)

とりあえず…

この二人は紹介済みなので、気になったら読んでみてください。

前田壽仙堂ブースでは、この5人の簡単な解説をしたキャプションは用意してあります。

いずれも「非・陶工」であり、「尾張の余技作家」という括りです。なおかつ時代も近しい、江戸中期~後期の人たち。極めて数が少ないので、一人(井出退甫)は関連する道具が全くありませんが…紹介はしてあります。

この5人はいずれも数が少なく、珍品といっていいものばかりです。

皆様のご来場をお待ちしております。

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