見立ての遊び
東京出張から返ってきたらパソコンのモニターが壊れるなど、ちょっとバタバタしておりました。モニター壊れると大変っすね。パソコンは動いてるのに、作業が何もできない…。
稽古場の話題
先日、僕が通っているお茶のお稽古場で「見立て」の話題があがりました。お茶の道具の中には、もともと「お茶で使うことを想定していないもの」が、用途に適う大きさ・形状・素材ゆえに、お茶の道具として「見立てられ」て、お茶道具として使われたものがあります。
古くは生活雑記であった備前や常滑の「壷」が水指として見立てられたり、漁師が魚を入れておく「魚籠」が花入として見立てられたり、現在でもガラス製の小物が茶器や蓋置などに見立てられたりもしています。
さて、こちら当店の盆点前STYLEの様子。茶室のない当店で、ちょっとした実験、一つの試みであります。
この中に2つ、見立てで使っている道具があります!どう見ても、明らかに異質なものが含まれて居ますね(笑)
釜がない盆点前には必須のポット
そもそも「盆点前用のポット」なんて存在しないんで、「見立て」というには、ちょっと苦しいかもしれませんね。
最近、お騒がせな「東芝」製の電気ポット。うちの婆ちゃんの台所を漁ってたら発見し、「おっ、盆点前にちょうどええやん」と、持ってきたものの…。うーん、独特のミントグリーンは中々取り合わせるのが難しいっすかね。色味はいかにも「昭和レトロ」を感じさせるのですが。
底のラベルを見ると、結構古い時代のToshibaのロゴが。どうやら1950~1969年、社名が「東京芝浦電器」から「株式会社東芝」に変わったころの製品のようです。
ざっくり言うと50年ぐらい昔の製品ですが、ちゃんと「電気ポット」としての機能は健在です。オシリにコードを指せば今でも現役。某T社製のポットのように「あっ、という間にすぐに沸く」と、いうわけには行きませんが…ちゃんとお湯を沸かせます!今は何でも壊れたらすぐ買い換える時代(我が家のPCモニターとかも)ですが、昭和レトロ家電はマジ頑丈。この頃の日本製の家電って、ひょっとすると100年後ぐらいには「侘びた茶道具」として日の目を見る日が…来るかな?(苦笑)
まだこの中に見立ての道具が
明らかに異質なポットはさておき、まだこの中にも見立ての道具があります。どれでしょう?
答えは写真右奥の「建水」でございます。
こちらはもともとも、とある料理屋さんで使われていた「フィンガーボウル」だそうです。材質は恐らくステンレス。長年の使用によってちょっと虹のようなまだらの変質が起こっていますが、むしろこれぐらい使用感があったほうが、他の道具との親和性は上がるんじゃないかと。
何度か実験で盆点前をしてお茶を差し上げた際、「なにその建水!」と話題に上がりました。外側は筋目がめぐらされており、手に持ったときのグリップも効きますし、南鐐ではないですが、ステンレスゆえ錆びないし凄く頑丈。うちでは特に時期を問わず使っていますけど、特にこの夏の時期なんかは、涼しげな感じが演出できて、ピッタリだなーと思います。(※ちなみに見立ての2つは当店の売り物ではなく、単に什器でございます)
ただこういった「見立て」というのは、中々できることじゃないですよね。何気なく日々を過ごしていると気づかないものも、そういう目線で見ると「使える」というものが案外あるものです。