三代豊介作 南蛮写箪瓢形水指

水指

※2020/11/1 紹介内容訂正。

香久連里

「カクレサト」と読みます。

江戸後期から現在の名古屋の上前津周辺で造られた「豊楽焼」の窯があった場所が香久連里といいます。その豊楽焼の3代目、大喜豊介の作品がこちら。

底部の畳付部分に「南蛮写 香久連里 豊介造 蝸牛好」と彫銘があります。

豊楽焼は江戸後期~大正までの8代に渡って続けられた窯で、三代豊介はこの「介」の独特の書き方に特徴があります。豊楽焼も勉強部屋でとりあげなくちゃ行けない名古屋の重要な焼き物ですね。いずれまた詳しいことは勉強部屋にて。

河村蝸牛

また「蝸牛好」とあります。蝸牛は「カタツムリ」とも読みますが、この場合は「かぎゅう」と呼び、江戸後期の名古屋の茶人、河村蝸牛のことを指します。勉強部屋で取り上げた「尾張の茶人シリーズ」の一人、河村曲全の孫にあたる人物です。

商品名を「箪瓢形水指」としてあります。瓢箪を逆さにした形なので、文字も上下ひっくり返って「箪瓢」なんですね。どうやらこの形を蝸牛が好んだ(恐らく蝸牛が豊介に指導し作らせた)ということなのでしょう。この形以外にも、「蝸牛好」の豊楽焼の水指が存在し、香久連里を訪れた蝸牛が、いくつかの種類の水指を作らせていたのではないかと考えられます。

※紹介内容訂正

蝸牛は豊楽の陶工を指導し、常滑の陶工たちから焼き締め陶器の生産技術を学ばせていたと考えられています。

この蝸牛によってもたらされた焼き締め陶器を指して、「蝸牛好の南蛮写」として豊楽焼の歴代に伝わり、二代豊八、三代豊介、五代豊助などが南蛮写を作っています。

この作品は蝸牛による常滑焼での指導の後、香久連里の窯で制作されたものだと思われます。

 

南蛮写

「南蛮」と一口に言ってもいろんな様式がありますが、こちらの作品は「南蛮〆切」の写しでいいと思います。外側の肌に荒めの筋彫りをめぐらせたデザインが「〆切」です。

本歌の南蛮手の水指や建水は、もともと生活雑記として東南アジア(ベトナムやタイなど)で造られたものが、「見立て」で茶道具として取り込まれたものです。器形はいたってシンプルなものが多く、箆目や筋目などの変化と、土の肌の風合いを楽しむものです。ですので、本来の南蛮水指にこのような形の水指はありません。この糸目の筋彫りのデザインを指して「南蛮写」と呼んでいるわけです。灰が被って、なんだか備前のような雰囲気もありますね。

いわば南蛮水指の進化系。南蛮写しの名手・豊介の意欲作って感じでしょうか。

※紹介内容訂正

ボディの造形は明らかに本歌の南蛮からは逸脱しており、恐らく茶人からの注文でこの形にしたと考えられます。

三代豊介が「香久連里」を名乗る時代に蝸牛が健在だったか確証がなく、この形のオーダーをした「茶人」が誰なのかは不明です。彫銘の「蝸牛好」とは、焼き締め陶器の技法(南蛮写)を指しての呼称だと思われます。

偶然、窯の中で灰が被ったことで備前のような景色が出ています。

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